私が勤めていた会社では葬送に関するあらゆるサービスを行っていました。
その中には「お墓じまい」もありました。
お墓じまいを検討されているお客様からの第一声として「お墓の引越しを考えているのだけど」が非常に多かったことを記憶しています。
そして詳しく話を聞くと、実はお墓の引越しではなく「改葬(かいそう)」をしてお墓じまいをしたいというご希望だったということがほとんどでした。
実は「改葬」と「お墓の引越し」は意味が全く異なるということをご存じでしょうか。
業界内でも間違えて使われやすい「改葬」と「お墓の引越し」という言葉。
そしてどちらの意味でも使われる「お墓じまい」という言葉の意味(内容)を正しくお伝えします。
お墓じまい業者や石材店と打ち合わせの際にこの言葉を誤って使っていると、的外れな見積りが出てきてしまうことがありますので注意してください。
といっても整理すれば何も難しいことはありませんのでご心配なさらずに。
どうぞ最後までお付き合いください。
- 改装の意味(内容)
- お墓の引越しの意味(内容)
- お墓じまいの意味(内容)
- 改葬とお墓の引越しとお墓じまいの違い
改葬の意味(内容)とは
改葬(かいそう)とは一言で言うと「お骨を今納骨されているお墓から別のお墓へ移動させること」です。
このお墓とは、あなたがイメージするいわゆる普通のお墓のこともあれば、納骨堂のこともあれば合葬墓(合同墓)のこともあります。
※納骨堂や合葬墓(合同墓)については別の記事で詳しく解説していますのでそちらを参考にしてください。
改葬は「墓地、埋葬等に関する法律(通称:墓埋法(ぼまいほう))」に定められています。
下記に引用しますのでご確認ください。
- この法律で「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう。(第二条 3項)
- 埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。(第五条 1項)
出展:墓地、埋葬等に関する法律(昭和二十三年法律第四十八号)|e-Govポータル(https://www.e-gov.go.jp)
上記の第五条1項に掛かれている通り、改葬は勝手に行うことができません。
指定された手続きをしたうえで、「改葬許可証」というものを発行してもらう必要があります。
改葬の手続きについては下記の記事で詳しく解説していますのでそちらを参考にしてください。
編集長「こまど」こんにちは。「葬送情報局」編集長のこまどです。お墓じまいを検討されている方は「改葬許可証(かいそうきょかしょう)」という言葉を聞いたことがあるかと思います。でも「具体的な取得方法についてはイマ[…]
実は「改葬許可証が不要」でお墓じまいをする裏ワザが存在します。
それが「散骨」です。
というのも、上記の「墓地、埋葬等に関する法律(通称:墓埋法(ぼまいほう))」の「第二条 3項」では「(改葬とは)他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう」とありますよね。
つまり、ご遺骨を他のお墓や納骨堂に移動させるわけではない「散骨」については「改葬許可証が不要」ということなのです。
実際、この件については私自身が各市町村役所及び法務省にも確認し、「散骨をする場合は改葬手続きは不要である」という回答をもらっています。
「みんなの海洋散骨」では44,000円(税込)で海洋散骨ができますのでオススメです。
乗船プランもあるようです。
見積りは無料ですので、散骨を検討されている方は一度見積りを取ってみることをオススメします。
お墓の引越しの意味(内容)とは
お墓の引越しとは一言で言うと「お墓(墓石)を別の場所へ移動させること」です。
例えば以下のような場合が考えられます。
- 先祖代々のお墓が遠方でお墓参りが大変なので、自宅近くに墓石とご先祖様のお骨を移動させる
- 建てたばかりのお墓で納骨をまだしていないが、やむを得ない事情で墓石を移動せざるを得なくなった
答えは「お骨の有無」です。
1はお骨の移動を伴うので「お墓の引越し+改葬」をすることになります。
そのため、改葬の手続きが必要になります。
2はお骨が無いのでお骨が無いので「お墓の引越しだけ」で済みます。
改葬の手続きは必要ありません。
ただし、お墓を移動できるのは墓地として許可を受けている区域のみなので注意してください。
近くの空き地にお墓の引越しをしようということはできません。
通常は移動先の墓地(霊園やお寺など)を契約してからお墓の引越しをします。
お墓じまいの意味(内容)とは
お墓じまいとは一言で言うと「お墓(墓石)を撤去処分し墓所を返還すること」です。
墓石を撤去するので、お墓の中にお骨が納骨されている場合はお骨を移動させなくてはいけません。
その場合は「お墓じまいをして改葬をする」ということになります。
そのため、改葬の手続きが必要となります。
「墓所を返還する」というのは、お墓が建っていた場所を墓地の管理者(霊園やお寺)に更地にして返すということです。
墓地を購入するという言い方をしますが、実際は墓地の中のあなたが使う墓所の使用権を購入しているだけなので、使わなくなった墓所は返さなくてはいけないのです。
お墓を建てたがやっぱりこのお墓は使わなくなった、という場合はお骨が入っていないので墓石の撤去処分をして墓所を返還すればOKです。
改葬の手続きは必要ありません。
ただし、実際にはお墓じまい(墓石の撤去処分)を勝手にすることはできません。
お墓じまいをする旨を霊園やお寺に伝え、所定のお墓じまいの手続きをする必要があります。
お寺だから手続きはないだろうと思い込んで勝手にお墓じまいをすると、後々トラブルに発展してしまいますので注意してください。
改葬とお墓の引越しとお墓じまいの違いとは
3つの違いをまとめて書くと、ダラダラと長くなって読みにくくなりそうです。
そのため、それぞれ1つを中心として見た時の他の2つとの違いという形で以下にまとめました。
改葬とお墓の引越し・お墓じまいの違い
改葬はお骨を移動させることです。
そのため、墓石を移動させる意味の「お墓の引越し」とは意味が異なります。
また、改葬はお墓(墓石)を残したままでもできます。
さらに、お骨とお墓(墓石)を一緒に移動させる時は「改葬とお墓の引越しをする」という表現になります。
そして、お墓(墓石)を撤去処分する「お墓じまい」とも意味が異なります。
お墓の引越しと改葬・お墓じまいの違い
お墓の引越しはお墓(墓石)を移動させることです。
そのため、墓石を残したままお骨だけを移動することもできる「改葬」とは意味が異なります。
また、お骨が納骨されていないお墓(墓石)の移動も「お墓の引越し」と言います。
さらに、お墓(墓石)とお骨を一緒に移動させる時は「お墓の引越しと改葬をする」という表現になります。
そして、お墓(墓石)を撤去処分する「お墓じまい」とも意味が異なります。
お墓じまいと改葬・お墓の引越しの違い
お墓じまいはお墓(墓石)を撤去処分し墓所を返還することです。
そのため、お骨を移動させる「改葬」とも墓石を移動させる「お墓の引越し」とも意味が異なります。
また、お骨が納骨されていないお墓(墓石)を撤去処分することも「お墓じまい」と言います。
さらに、お墓(墓石)を撤去処分してお骨を移動させる時は「お墓じまいをして改葬する」という表現になります。
お墓じまいはほとんどの場合、改葬とセットで行われます。
まとめ
改葬・お墓の引越し・お墓じまいのそれぞれの意味(内容)を一言で書くと
- 改葬=お骨を移動させること
- お墓の引越し=お墓(墓石)を移動させること
- お墓じまい=お墓(墓石)を撤去処分し墓所を返還すること
となります。
冒頭で「業者と打ち合わせの際にこの言葉を誤って使用すると的外れな見積りが出てきてしまうことがあります」とお伝えしました。
例えば、
- お墓じまいをしたいのに「お墓の引越しをしたいんだけど」と伝えると、引越し先の墓所でお墓の設置し直す工賃の見積りを出された
- お墓の引越しをしたいのに「改葬をしたいんだけど」と伝えると、墓石の引越し費用の見積もりが抜けていた
なんてことにならないとも限りません。
ぜひこの記事で書いたことを参考に業者と打ち合わせに臨んでもらえればと思います。