大切なお墓の墓じまいでトラブルには巻き込まれたくないものです。
しかし、とんでもないトラブルが起きてしまったケースが実際にあります。
この記事では、元葬送業界に勤めていた私が実際に見聞きした「本当にあったお墓じまいに関するトラブル」についてご紹介します。
あなたはこんなトラブルに巻き込まれないよう、しっかりと対策・準備を怠らないようにしましょう。
- これからお墓じまいをしようと思っている方
- お墓じまいをしようか迷っている方
- これからお墓じまいを控えている方
- 年間10,000件以上の葬送サービスのご相談を対応
- 年間2,000件以上の「墓じまい」のご相談を対応
- 年間300件以上の「墓じまい」を施行
本当にあった墓じまいトラブル1.違うお墓を解体してしまった
これは私が石材店から聞いたお墓じまいトラブルです。
なんと、あろうことか依頼者のお墓ではない、全く関係無いお墓を解体してしまったのだとか。
お墓の正面に書かれている名前が「佐藤家」とか「山田家」とか、よくある姓だったことが災いしてしまったようです。
また、整備された霊園ではなく、寺院墓地だったこともこの悲劇を引き起こした要因だったようです。
というのも、霊園であれば各お墓には場所を示す番号が付けられているものですが、寺院墓地ではそういった番号は無いのが通常です。
そのため今回のようなトラブルを引き起こす結果となってしまいました。
お墓に番号が付いていないということは、対象となるお墓を探すには依頼者の記憶を頼りに探すか、依頼者が持っているお墓の写真を元に探すしかありません。
残念ながら今回の場合は依頼者の記憶を頼りに探したそうです。
さらに依頼者に現地を案内してもらったわけでもなく、「お寺の敷地のこのあたりにこういうお墓がある」という情報を頼りに探し、石材店がこれかな?と思うお墓の写真を撮って依頼者に確認したそうで。
さらに最悪なのは、お墓を確認してもらうために撮影した写真を、メールに添付して依頼者に送ったのではなくFAXで送って確認を取ったのだとか。
FAXで写真を送っても、黒く潰れてしまってお墓の確認なんかできません。
結局依頼者も、送られてきたFAXを見てもそれが自分のお墓かどうかきちんと判別はできなかったようですが、かろうじて見えた「〇〇家」という文字からこれが自分のお墓であると思い込んでしまったようです。
そして石材店は依頼者から「このお墓で間違いない」という返答をもらったため、間違ったお墓の解体工事を行ってしまったというわけです。
ここまで、依頼者と石材店は一度も現地で顔合わせをしていません。
お墓が間違っていたと判明したのは、工事が完了し、依頼者が墓地まで遺骨を受け取りに来た時に初めて分かったそうです。
当然、間違って壊されてしまったお墓の持ち主には平謝りの上、新しいお墓を無償で立て直したということでした。
違うお墓を解体してしまうとは…お墓じまいのトラブルとしては最大級のトラブルですね。
こんなトラブルを防ぐためには
上記の「違うお墓を解体してしまった」というトラブルを防ぐためには下記の点に注意しましょう。
- できるだけ詳細なお墓の情報を石材店に伝える
- お墓の確認は写真をメールで送ってもらう
- できれば自分が持っているお墓の写真を石材店に共有する
- 自分で石材店をお墓まで案内する
1については、お墓の情報として「墓碑銘(〇〇家)」「建立者名」「既に彫られている人の名前」など、できるだけ詳細な情報を伝えることで防ぐことができます。
このトラブルが起きた原因の一つは、石材店に伝えていたお墓の情報が「〇〇家」だけだったという点にあります。
「佐藤家」や「山田家」といった姓は同じ墓地内にも複数ある場合がほとんどです。
そのため、石材店に伝える情報としては
- 正面に彫られているのは「〇〇家」
- 裏面に彫られている建立者名は「〇〇▲▲」
- 建立者以外で既に彫られているのは「〇〇■■」と「〇〇××」
といったように、彫られている文字を分かる範囲で構いませんので分かっている情報は全て伝えましょう。
また、トラブルが起きた大きな原因は「お墓の確認をFAXで行った」ことだったと言えます。
そこで2の「お墓の確認は写真をメールで送ってもらう」というのは必須だと覚えておいてください。
写真をメールで送ってもらってさえいれば、石材店がお墓を間違えているということに気づけ、このようなトラブルは起こらなかったでしょう。
そして3の「自分が持っているお墓の写真を共有」しておくことで、石材店が現地確認に行った際に、現地のお墓と依頼者からもらった写真を見比べながら正しいお墓を探すことができます。
この場合も石材店には現地で確認したお墓の写真を撮影してもらい、メールで送ってもらいましょう。
万が一にも違うお墓を壊さないためには写真確認は必須です。
最後に、上記の1~3がどれも難しい場合は遠隔での見積りを諦め、石材店をお墓まで案内しましょう。
乏しい情報で石材店に現地確認を任せたり、写真確認を疎かにするとこのようなトラブルを引き起こします。
本当にあった墓じまいトラブル2.納骨手続きをしていない遺骨が入っていた
公営霊園の場合、遺骨を納骨するには管理事務所で納骨手続きを行う必要があります。
しかし、このケースでは納骨手続きを行わずにお墓へ遺骨を納骨してしまっていました。
「納骨できているのであれば問題ないじゃないか。」そう思われる方もいるかもしれません。
しかし、問題は納骨ができるかできないかではありません。
納骨手続きを行っていなかった結果、なんとこのお墓の持ち主はお墓じまいができませんでした。
それはなぜか。
答えは「改葬申請手続きができなかったから」。
公営霊園の場合、改葬申請の際に納骨されている記録と照らし合わせるのですが、当然納骨手続きがされていない遺骨は照会することができません。
結果として、納骨手続きがされていない遺骨は改葬許可がおりませんでした。
改葬許可がおりないということは、遺骨を移動させることができません。
遺骨を残したままお墓の解体はできませんので、結局お墓じまいは断念せざるを得ませんでした。
こんなトラブルを防ぐためには
このケースのトラブルを防ぐための方法は2つ。
- お墓の持ち主は手続き関係のことをきちんと後継ぎの方へ伝えておく。
- お墓を引き継いだ方は何をするにも一度管理事務所に確認をしてから行う。
このケースのトラブルが起きた原因は、お墓の持ち主が「納骨の際には納骨手続きが必要」ということを知らなかったことにあります。
これは、元々のお墓の契約者である両親が、後継ぎである子供へそのことを事前に伝えずに亡くなってしまったためです。
「管理事務所で手続きをしなくても納骨できるの?」と思われるかもしれませんが、正直手続きをしなくても納骨はできてしまいます。
というのも、別にお墓へ納骨をするのは管理事務所の仕事ではないからです。
自分で石材店を呼び、お墓の納骨室の蓋を開けてもらって骨壺を入れるだけなので、納骨手続きをせずとも物理的には納骨が可能です。
遺骨を出す時も石材店を呼んで勝手に取り出せばいいじゃないかと思いますが、改葬許可証が発行されていないので遺骨の移し先が受け入れてくれません。
本当にあった墓じまいトラブル3.あるはずの遺骨が無かった
ケース1.親族が持って行ってしまっていた
お墓を開けたら遺骨が入っていなくてビックリ!というトラブルケースその1です。
結論を言うと親族が遺骨を黙って改葬していたということだったのですが、お墓じまいを依頼してきた墓守だった依頼者はそのことを知りませんでした。
お墓じまいの工事中に遺骨が無いことが発覚して依頼者はパニックになり、警察に届けを出すことになりました。
もちろんお墓じまいの工事も中断。
依頼者から連絡があったのはおよそ半年後のことでした。
親族が知らないうちに遺骨を改葬していたということを顛末を聞き、お墓じまい工事を再開。
無事に完了することができました。
なぜ墓守でもない親族が遺骨の改葬ができたのかというと、お墓が私有地に建っていたからですね。
寺院墓地や公営霊園では墓守である墓地使用者でなければ改葬手続きができませんが、私有地の場合は改葬申請者が墓地使用者かいなかを市区町村役場の方で判断ができません。
改葬許可申請書に必要情報を書けば改葬許可証が発行される状況下だったために起きたのでしょう。
ケース2.探しても探しても見つからない
お墓を開けたら遺骨が入っていなくてビックリのケース2です。
結論は、墓地敷地内の予想外の場所に埋められていたというだけの話だったのですが、それが分かるまでには非常に苦労しました。
そのお墓は納骨室が無いタイプのお墓でした。
通常、そういうタイプのお墓の場合、遺骨はお墓の下の地面を掘って埋葬します。
依頼者は高齢者の方だったのですが、依頼者もそのお墓へは子供の時にお墓参りへ行ったっきりで、もう何十年も足を運んではいなかったそうです。
朧げながらお墓の下を掘って遺骨を埋めた記憶があったそうなので、石材店がお墓の下を数十cm掘りました。
しかし遺骨は出てきません。
通常、50cmも掘れば遺骨は出てくるものですが出て来なかったため、「遺骨無し」として依頼者へ報告するも、依頼者曰く「必ず遺骨はあるはず」ということで、翌日再度墓地を掘ることになりました。
しかし、深さ1m掘っても遺骨は見つからず…お墓の下だけでなく、お墓の周りも掘り起こしてみたのですが、やはり遺骨は見つかりませんでした。
そのことを依頼者は報告するも、やはり「遺骨は必ずあるはず」の一点張りだったため、仕方なく後日再度墓地を掘ることになりました。
そして最終的には遺骨はお墓の下ではなく、墓地の敷地の一番端に埋葬されていました。
4㎡ある墓地の端です。どうりで見つからないわけです。
石材店は遺骨を見つけるために三度も現場に行っているので大赤字です。
それでも遺骨が出てきたのでまだマシですね。
これが、お墓は遺骨を埋めたことも記憶違いであったなら…と思うとゾッとします。
こんなトラブルを防ぐためには
遺骨をどこへ埋葬したか、特に地中に埋葬した場合は敷地内のどこへ埋葬したかをしっかり記録しておきましょう。
もちろん、後継ぎにもその記録をしっかり共有しておきましょう。
今回のケースは石材店が良い人だったので最後まで付き合ってくれましたが、通常であれば「これ以上は契約内容に入っていない」と断られるか、もしくは追加料金を請求されます。
そのような事態にならないためにも、敷地の地図を描いて遺骨をどこへ埋葬したかを記録しておきましょう。
本当にあった墓じまいトラブル4.知らずに合葬墓へ納骨されてしまった
これは私が勤めていた葬送サービス会社に救いを求めてお問合せを頂いたお客様から聞いた話です。
そのお客様は他社の葬儀社で葬儀を済ませたそうです。
そして火葬後の遺骨を「永代供養してはどうか」とその葬儀社に勧められたそうです。
お客様はお墓を持っていたので、四十九日が過ぎたらそのお墓へ納骨をする予定だったそうですが、四十九日が過ぎるまでの間、一時的に預けるという意味で遺骨を葬儀社へ渡したそうです。
結果として、遺骨は合葬墓タイプの永代供養墓へ納骨されてしまい、遺骨の返却をしてもらえなくなってしまったというトラブルに発展しました。
私の会社へ問合せを頂いたのは、遺骨を返却してもらう方法は無いかという相談でした。
しかし、残念ながら一度合葬墓へ納骨してしまっては遺骨を返却してもらうことはできません。
しかしながら、話を聞くと実に可哀想な状況だったようです。
というのも、実はこのトラブル、単純にお客様が説明をちゃんと聞かずに合葬墓へ納骨してしまったことが原因とは言い切れません。
なぜなら、永代供養墓を提供している寺院の契約書へ葬儀社が代理でサインをしたと言うではありませんか。
お客様も同席をされたそうですが、葬儀社が「大丈夫大丈夫。任せて」といった感じで説明もうやむやにサインをしたそうです。
葬儀社からすると、「永代供養墓=合葬墓」というのは当たり前という認識で説明を省いたのかもしれません。
しかし、一般のお客様からすると「永代供養墓=合葬墓」なんて初めて聞いたという方がほとんどでしょう。
説明を省き、あげくお客様の代わりに契約書へサインをして納骨させるなんて言語道断です。
ここまで酷いと、この葬儀社は永代供養墓先の寺院から紹介料をもらっていたのではないかと勘繰ってしまいますね。
紹介料をもらうためにとにかく急いで永代供養墓へ納骨させてしまおうという魂胆が見え隠れします。
こんなトラブルを防ぐためには
こんなトラブルを防ぐために気をつけるべきことは2つ。
- 遺骨をどうするかは、葬儀後しばらく時間をおいてゆっくり検討する
- (当然ですが)契約書は内容を良く読み、自分自身でサインする
大切な人が亡くなって精神的に弱っていることに加え、葬儀などの準備で慌ただしい中では、なかなか正常な判断は出来ないものです。
そのため、遺骨をどうするかについては慌てずに、葬儀後に時間を取ってゆっくりと検討しましょう。
今回のケースではお客様が遺骨を返却してもらえると思い込んでいたために起きた事態ですが、当然ながら契約内容は自分自身できちんと確認してから契約をしましょう。
遺骨を一時的に預けたかったというこのお客様の場合、一言「遺骨はちゃんと返却してもらえますよね?」と尋ねていれば回避することができたトラブルでした。
少しでも気になることは恥ずかしがらずに必ず確認するようにしましょう。
本当にあった墓じまいトラブル5.納骨室が改造されていた
これはある公営霊園にお墓をお持ちだったお客様のお話です。
公営霊園では納骨室が最初から用意されていて、その上にお墓を建てるという形式になっている場合があります。
お客様のお墓もそのような形式でした。
ある程度の規則はありますが、納骨室の上に建てるお墓はお客様の自由な形で建てても問題ありません。
お墓じまいをする場合は、墓石を解体撤去し、遺骨を取り出してお墓を建てる前の状態にすればOKです。
しかし、今回のお客様の場合は墓石を撤去し、遺骨を取り出すだけでは霊園から「お墓じまい完了」とは認められませんでした。
それはなぜか。
理由は、納骨室が改造されていたから。
お墓じまいを対応した石材店によると「この霊園で何十年も仕事をしているが、納骨室が改造されているのは初めて見た」とのことでした。
納骨室を改造というのは、納骨室内を高い石を使って新しい間取りにしていたというイメージです。
おそらくお墓を建てた石材店が、売り上げを上げるために納骨室の改造を提案したのでしょう。
当時はお墓じまいをするという考えも無かったと思われます。
しかし、改造をしてしまったからには元に戻さなくてはいけません。
当然、お客様の費用負担で修復工事をすることになります。
お墓を建てた方ではなく、後を引き継いだ世代が費用を出して修復しなくてはいけません。
今回は予定していた工事日数で終えることもできず、追加工事費+修復費用が掛かってしまうことになりました。
こんなトラブルを防ぐためには
基本的に元々用意されている納骨室を改造するような突飛なことはしないに越したことはありません。
どうしても改造をする場合は、お墓じまいをする場合のことも霊園の管理事務所にきちんと確認をしておきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
私が実際に見聞きした「本当にあったお墓じまいに関するトラブル」をいくつかご紹介させていただきました。
「こんなトラブルは滅多に無いでしょ」と思うかもしれません。
しかし、滅多に無いということは逆に言うと稀に起こるということです。
自分は大丈夫と過信せずに、対策と準備を怠らないようにしましょう。