突然ですが、あなたは「遺骨は郵送できる」ということをご存じでしょうか。
遺骨の郵送方法を知っていると下記のような場合に役に立ちます。
- 遠方にあるお墓を墓じまいしたいが、遺骨を取りに行くのが難しい
- 手元に置いてある遺骨を遠方の永代供養先へ郵送したい
私は葬送サービス会社で10,000件以上の葬送に関するご相談を受けてきました。
特に「墓じまい」や「永代供養」といったご相談は非常に多くありました。
さらに「墓じまい」や「永代供養」のお手伝いをしたお客様の多くが、お墓から離れた土地に住んでおられました。
そうなると、お客様がお墓までご遺骨を取りに来るというのが難しいというケースが多々ありました。
特に近年はコロナの影響で県をまたいでの移動が制限されていたという事情もあります。
そういう場合はどうするかというと、遺骨をお客様の自宅もしくは改葬先へ郵送するのですが、「遺骨を郵送する」というとほとんどのお客様が驚かれます。
業界人からすると当たり前になっているのですが、世間には「遺骨が郵送できる」ということがあまり浸透していないようです。
そこで今回は遺骨の郵送方法について詳しくお伝えしたいと思います。
- 遺骨を郵送する方法
- 遺骨を郵送する時に必要な書類
- 遺骨の郵送に掛かる費用
- 遺骨を郵送中に紛失されてしまった場合の補償
- 遺骨を郵送する良くあるケース
編集長「こまど」の実績
- 年間10,000件以上の葬送サービスのご相談を対応
- 年間2,000件以上の「墓じまい」のご相談を対応
- 年間300件以上の「墓じまい」を施行
遺骨を郵送できるのは「ゆうパック」だけ
日本国内で遺骨を郵送できるのは「ゆうパック」のみとなっています。
というのも、大手の配送業者で遺骨の配送を請け負っているのは「日本郵便株式会社」のみだからです。
他の大手配送業者はどうなっているかというと、
- 佐川急便:佐川急便(飛脚宅配便・飛脚ラージサイズ宅配便)約款に「遺骨・位牌・仏壇」は引受けを拒絶するとの記載あり。
- ヤマト運輸:宅急便約款に「遺骨・位牌・仏壇」は引受けを拒絶するとの記載あり。
となっています。
日本郵便では遺骨の引受けも全く問題がありません。
遺骨を郵送するのは違法ではないの?
遺骨の郵送は違法ではありませんので安心してください。
念のため、郵便法の一部を下記に引用します。
(郵便禁制品)
第十二条 次に掲げる物は、これを郵便物として差し出すことができない。
一 爆発性、発火性その他の危険性のある物で総務大臣の指定するもの
二 毒薬、劇薬、毒物及び劇物(官公署、医師、歯科医師、獣医師、薬剤師又は毒劇物営業者が差し出すものを除く。)
三 生きた病原体及び生きた病原体を含有し、又は生きた病原体が付着していると認められる物(官公署、細菌検査所、医師又は獣医師が差し出すものを除く。)
四 法令に基づき移動又は頒布を禁止された物
郵便法で禁止されているのは上記に記載されているものだけであり、遺骨はそのどれにも該当しないため違法にはなりません。
「法令に基づき移動又は頒布を禁止された物」とありますが、遺骨の移動を禁止する法令はありませんのでこれにも該当せず、違法とはなりません。
ただし、遺骨の郵送が認められているのは日本国内だけであり、海外への遺骨の郵送は原則禁止となっています。
やむを得ない事情で遺骨を海外へ輸送したい、もしくは海外から日本国内へ遺骨を持ち込みたい場合は別途手続きが必要となります。
海外へのお骨の輸送方法については下記の記事を参考にしてください。
送骨サービスとは
一般的に”遺骨を郵送すること”を「送骨(そうこつ)」と呼びます。
一部のサイトでは「送骨」もしくは「送骨サービス」とは遺骨を郵送するだけでなく、送付先で”納骨”をするまでの一連の作業を指すと言われています。
ですが私の見解は異なり、「送骨」とは読んで字のごとく、あくまで遺骨を送る作業のみであると考えています。
さらに言えば、遺骨を送ることができるのはゆうパックだけなので、「送骨=遺骨をゆうパックで送る作業」を指していると言えるでしょう。
「納骨」という言葉があるにも関わらず、「送骨」という言葉だけで納骨作業まで表すというのは少々強引な気がしますよね。
ちなみに、「送骨納骨」という言葉は株式会社プロの商標として登録されているため、営利目的でこの言葉を使用することはできません。
送骨納骨の商標について
登録番号:第6060200号
遺骨をゆうパックで郵送(送骨)する時の必要書類
遺骨をゆうパックで郵送すること自体には特に必要な書類はありません。
ただし、郵送先でお墓や永代供養墓、納骨堂などに納骨するための必要書類はありますので紹介します。
ほとんどの方が郵送先で納骨をすると思いますので、ここで紹介する書類を事前に準備しておきましょう。
火葬後、一度もお墓に納骨をしていない遺骨を納骨する場合の必要書類
火葬後、一度もお墓に納骨をしていない遺骨を納骨する場合の必要書類は「火葬許可証」または「埋葬許可証」になります。
火葬許可証は故人様を火葬するために市区町村役場で発行される書類です。
火葬が終わると、火葬許可証に火葬済みの印が押され返却されます。
現代ではこの印が押された火葬許可証が「埋葬許可証」としての役目を果たしますので納骨まで大切に保管しましょう。
印が押された火葬許可証(埋葬許可証)は火葬後のご遺骨を納めた骨壺の中に入れられている場合が多いです。
埋葬許可証を見た記憶が無いという方は一度骨壺の中を確認してみてください。
もしも紛失している場合には故人様を火葬した火葬場か火葬許可証を発行してくれた役場に連絡し、再発行してもらいましょう。
火葬許可申請書は火葬から5年間は保管しなくてはいけない決まりとなっているので、火葬から5年以内であればスムーズに再発行してもらえます。
5年を過ぎていると再発行が難しくなりますので注意してください。
既にお墓に納骨している遺骨を別のお墓・永代供養墓・納骨堂へ納骨する場合の必要書類
既にお墓に納骨している遺骨を別のお墓・永代供養墓・納骨堂へ納骨する場合の必要書類は「改葬許可証」になります。
改葬許可証とは現在納骨しているお墓から別のお墓や永代供養墓、納骨堂へ遺骨を移動させる場合に必要になる書類です。
改葬許可証は現在納骨しているお墓がある市区町村の役場で発行してもらえます。
改葬許可証について詳しくは下記の記事で解説していますのでよければ参考にしてください。
編集長「こまど」こんにちは。「葬送情報局」編集長のこまどです。お墓じまいを検討されている方は「改葬許可証(かいそうきょかしょう)」という言葉を聞いたことがあるかと思います。でも「具体的な取得方法についてはイマ[…]
遺骨を納骨先へ郵送する場合は、上記で紹介した納骨に必要な書類も同封して送るようにしましょう。
書類が無いと納骨ができませんので。
遺骨をゆうパックで郵送(送骨)する手順
遺骨をゆうパックで郵送する手順は、通常の荷物を郵送するのと同じです。
- 遺骨を梱包する箱(段ボールなど)を用意する
- ゆうパックの送付伝票を書く
- 遺骨と必要書類を同梱する
- 荷物に送付伝票を貼る
- 荷物を持ち込むか集荷してもらい発送する
下記に各注意点を記載しておきます。
遺骨を梱包する箱(段ボールなど)を用意する
郵送するのが遺骨だからといって気負う必要はありません。
通常通り、段ボールなどに遺骨を入れましょう。問題なく郵送できます。
ゆうパックの送付伝票を書く
ゆうパックの送付伝票は郵便局か提携しているコンビニ(ローソン・ミニストップ・セイコーマート)でもらうことができます。
送付先によっては着払いで受け取ってくれる場合もありますので、送付先に確認したうえで発払伝票か着払伝票のいずれかに記入します。
気になるのは「品名には何と書けばいいの?」という点ですよね。
品名には「遺骨」と書いて問題ありません。
また、「こわれもの」「逆さま厳禁」「下積み厳禁」に〇を付けておくといいでしょう。
遺骨と必要書類を同梱する
納骨先に遺骨を郵送する際には、前述した必要書類も忘れずに同梱しましょう。
忘れると受取先が納骨できずに困ってしまいます。
もし必要書類を同梱し忘れた場合は、別途書類だけ郵便で送るようにしましょう。
荷物に送付伝票を貼る
伝票を書いたはいいが貼り忘れた、なんてことにならないように気をつけてください。
この記事を見ながらチェックを入れていくのもアリですね。
荷物を持ち込むか集荷してもらい発送する
荷物の準備ができたら、自分で郵便局か提携のコンビニ(ローソン・ミニストップ・セイコーマート)に持ち込むか、0800-0800-111に電話をし、集荷を申し込みましょう。
発送後の伝票の控えには「お問い合わせ番号(追跡番号)」が記載されているので、無事に遺骨の到着が確認できるまで大切に保管しておきましょう。
「お問い合わせ番号(追跡番号)」を下記のリンク先で入力すれば現在の郵送状況が確認できます。
遺骨の梱包方法
遺骨を梱包する時の注意点について触れておきます。
骨壺の中から水を抜く
お墓に納骨していた骨壺には水が入ってしまっていることがあります。
水が入った状態で送ると水が漏れ、他の荷物を濡らしてしまう危険性もあるので水はしっかりと抜きましょう。
できたら遺骨は乾燥させる
骨壺の中に目に見える水が入っていなくても、骨が湿気を含んでしまっていることがあります。
湿気を含んでいるとカビたりする可能性が高まるので、できたら一度ご遺骨を乾燥させておきたいところです。
乾燥は新聞紙などを敷いた上にご遺骨を広げ、天日干しをするだけでOKです。
住宅街などで近隣の人の目もあるので…という場合は無理に行う必要はないでしょう。
また、外で遺骨を広げる場合は風に吹かれて飛ばされないように注意が必要です。
骨壺の蓋を固定する
骨壺の蓋が郵送中に外れてしまわないようにテープで固定しましょう。
蓋を真上から見て十字になるようにテープを貼って固定すればOKです。
骨壺を袋に入れる
万が一骨壺の蓋が外れてしまった時の保険や骨壺から水漏れがしないように、骨壺を袋に入れてから送る箱にいれましょう。
骨壺を入れた箱の隙間は緩衝材で埋める
骨壺を郵送用の箱に入れて隙間がある場合は、新聞紙や市販の緩衝材で隙間を埋めましょう。
骨壺が箱の中で揺れて割れることを防ぐためです。
受取先が骨壺不要の場合は遺骨を納骨袋に入れる
受取先によっては「骨壺は送らないで」という場合があります。
そういう場合は骨壺から遺骨を出し、下記のような「納骨袋」に入れて発送しましょう。
以上が遺骨梱包時の注意点になります。
遺骨の郵送(送骨)に掛かる費用
遺骨の郵送に掛かる費用は「送料」と「梱包材」くらいです。
遺骨といえど送料は通常の荷物の時と同様です。
箱のサイズと送り先によって送料が変動します。
ゆうパックの送料は下記のリンク先で算出することができます。
また、梱包材は家にある余っている箱や新聞紙などの緩衝材があれば特に費用は掛かりません。
手元に手頃な段ボールが無い場合には郵便局で購入することもできます。
料金はサイズによって100円~380円となっています。
郵便局で購入できるゆうパック用の梱包材は下記のリンク先で確認できます。
遺骨を郵送中(送骨中)に紛失されてしまった場合の補償について
結論から言うと、遺骨をゆうパックで郵送中に紛失してしまった場合、金銭での補償はほとんど受けられないと思ってください。
というのも、「ゆうパックの約款」には下記のように記されています。
(損害賠償の額)
第27条 当社は、荷物の滅失による損害については、荷物の価格(発送地における荷物の価格をいいます。以
下同じとします。)を送り状に記載された責任限度額(以下「限度額」といいます。)の範囲内で賠償します。出展:ゆうパック約款
ポイントは「荷物の価格を責任限度額の範囲内で賠償します」という部分です。
ゆうパックの責任限度額は30万円です。紛失や破損した荷物の価格が50万円の物でも損害賠償の額は最高30万円までしか補償されないという意味です。
では遺骨を紛失した場合、30万円の損害賠償金が出るかというと、おそらく出ないでしょう。
遺骨には価格が無いからです。
「大切な人の遺骨を紛失したなんて…お金には代えられないくらいショックを受けたので限度額満額の損害賠償金を支払って」というのはおそらく通用しないでしょう。
おそらくと言ったのは、私は実際に遺骨を紛失されたという体験もしたことがなければ聞いたことも無いためです。
ちなみに遺骨を入れていた骨壺など、価格がついている物は補償されます。
骨壺が1万円のものであれば損害賠償金は1万円になります。
もし骨壺が30万円の高級なものであれば限度額いっぱいの30万円の損害賠償金をもらえます。
骨壺が50万円の超高級なものでも30万円の損害賠償金しかもらえません。
一応お伝えしておくと、ゆうパックのオプションとして「セキュリティサービス」を付けておくと、損害賠償の限度額が50万円までに引き上げられます。
セキュリティサービスのオプション料金は運賃に+380円となっています。
とはいえ、そんな高級な骨壺を購入されている人を私は見たことがありませんが。
遺骨を郵送(送骨)する良くあるケース
最後に私が10,000件を超えるご相談を受けた中から、実際にお客様が遺骨を郵送された「良くあるケース」をご紹介します。
お墓じまいに伴い遺骨を遠方へ改葬する
遠方にあるお墓を墓じまいし、納骨されていた遺骨を自宅近くの納骨先に改葬する場合には遺骨を郵送することが多くあります。
このケースではお墓まで遺骨を取りに行くことも難しい場合が多くあります。
そのため、お墓じまいの工事をする石材店がお客様に代わり遺骨を郵送することも多々あります。
郵送先はお客様の自宅の場合もあれば、改葬する永代供養先へ直接お送りすることもありました。
海洋散骨業者に遺骨を渡す
これも多くあるケースです。
海洋散骨は船に乗って海に遺骨をまくサービスです。
海洋散骨業者の多くは「乗船散骨プラン」と「委託散骨プラン」を用意しています。
「乗船散骨プラン」では遺族が船に乗船し、一緒に海に出て遺骨をまきます。
一方、「委託散骨」では遺族は船に乗船しません。
全国から集まった遺骨を海洋散骨業者だけで海にまくプランになります。
一度に複数人分の遺骨をまくため、乗船プランに比べ費用がかなり安く済みます。
海洋散骨業者は委託散骨する遺骨を全国から郵送で送ってもらい、ある程度の数が集まったら船を出すというのが一般的です。
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粉骨業者に遺骨を渡す
粉骨(ふんこつ)とは遺骨を細かく砕いてパウダー状にするサービスです。
遺骨を自宅で長期間保管する時や、スペースの小さい納骨堂に遺骨を納めるために遺骨の体積を小さくするために利用されます。
そうそう、散骨をする時にも粉骨しますね。
持ち込みで対応してくれる粉骨業者も一部ありますが、ほとんどの業者が全国から郵送で遺骨を送ってもらい粉骨作業を行っています。
お客様が遺骨を粉骨業者に郵送し、粉骨業者も粉骨しパウダー状になった遺骨を郵送でお客様へ返却します。
遠方で亡くなった方の遺骨を手元に送る
例えば旅行先での不幸や単身赴任先での不幸など、遠方で亡くなってしまった場合にも遺骨を郵送することがあります。
亡くなった先で火葬を済ませご遺骨になった故人様を自宅へ郵送するという形です。
理由としては、骨壺を持ったままの移動が大変だからということのようです。
また、公共交通機関に骨壺を持って乗るのは気が引けるということもあるようです。
ちなみに、ご遺体のまま地元まで連れ帰る場合は「ご遺体搬送」という別のサービスになります。
まとめ
遺骨を郵送する方法について、上手くお伝えできましたでしょうか。
もちろん、「ご遺骨を郵送で送るなんて…」という批判的な意見の方もいらっしゃるとは思います。
ですが、いざという時には郵送もできるんだということを知っておくだけでも意味はあると思います。
実際、私がお墓じまいなどでお手伝いをしたお客様からは「遺骨を自宅へ郵送してもらえて助かった」というお声がとても多かった。
というのも、この方法であればお客様がお墓へ行くことなく、全てお任せでお墓じまいを完了することもできるからです。